――ネットの熱狂と、現場の現実はなぜ食い違うのか
前橋市長選は、単なるスキャンダル選挙でも、保守と改革の争いでもなくなっている。いま起きているのは、「ネット空間」と「現実の有権者空間」が乖離したまま進む、極めて現代的な選挙だ。
小川晶前市長と丸山彬候補。
実質この2人の戦いである前橋市長選は、「誰の声がこの街の意思を代表しているのか」という問いを突きつけている。
ネットでは小川晶が圧勝している
まず、数字だけを見れば、小川晶氏は圧倒的だ。
Facebookの投稿につく「いいね」の数は、常に3~4桁。
応援集会前後では2,000を超え、現在も1,000前後を維持している。しかもそのリアクションの多くが「♡(共感)」で占められ、怒りや悲しみといったネガティブ反応はほとんど見られない。
これは何を意味するのか。
小川氏には、感情的に強く結びついた支持者の集団が存在しているということだ。スキャンダルがあっても離れず、「叩かれるほど応援したくなる」という心理が働いている。


一方の丸山彬氏はFaceBookのフォロワー数も投稿数も少ないため、比較はできないが、いいねの数は直近で86→345→84。メディアでの露出度が違うため、これをもって、丸山支持者が少ないとは言えない。むしろ、丸山候補が出てきた辺りから、小川候補の「いいね」の数も下降傾向にあるという動きから、小川支持者の一定数が丸山氏を含む別の候補に流れているとみるべきだろう。

SNSのトレンド分析でもネットで小川氏がいい意味でも悪い意味でも話題性があることを裏付けている。過去1か月の投稿数は3,600件超。話題性は丸山氏の十数倍だ。
ネット上では、前橋市長選は「小川晶の選挙」になっている。


しかし、そのネットは「前橋」ではない。問題は、その熱狂の出どころだ。
一部報道によれば、小川氏を擁護・拡散しているアカウントの多くは県外にいるとされている。スキャンダル政治は、地方選挙であっても全国的な“娯楽コンテンツ”になる。「ラブホ市長」「炎上」――こうした話題性は、実際に投票権を持たない外部の人々を引き寄せる。
ネットでの人気と、投票箱での強さは、必ずしも一致しない。
検索ワードが示す“操作された空気”
検索エンジンの関連ワードは、その歪みをさらに際立たせる。
検索ワード「小川晶」で出てくるのは、「かわいい」「若い頃」「なぜバレた」。
一方、「丸山彬」では、「不倫」「操り人形」「女性問題」。


丸山氏にはスキャンダルがない(とされている)にもかかわらず、ネガティブワードが並ぶ。これは自然発生的な関心ではなく、意図的に検索結果を汚す行為が行われていると見る方が合理的だ。
ネット空間は、すでに「世論」ではなく「戦場」になっている。
現場では、まったく違う風景が広がっている
では、実際の前橋では何が起きているのか。
集会写真を見比べると、象徴的な違いがある。
小川氏の集会では、白髪の参加者が多く、それほどではないが空席もある。

丸山氏の集会では、約1,500人が詰めかけ、若い世代が多く、会場に入りきれない人が出たとも報道されている。

ここに、今回の選挙の本質がある。
小川氏は、高齢層を中心とした強固な固定支持層を持っている。
丸山氏は、これまで投票に行かなかった層を動員し始めている。
選挙を動かし始めた田中仁という存在
この変化の引き金を引いたのが、JINS創業者・田中仁氏だ。
田中氏は、前橋で実際に街を変えてきた人物である。白井屋ホテル、再開発、めぶくプロジェクト――目に見える実績を持つ人間が丸山氏を支持した。
これはネット上の好悪よりも、はるかに強い選挙の潮目を変える現実的なファクターだ。
勝敗を決めるのは「どちらが人を投票所へ連れて行けるか」
いま前橋市長選で起きているのは、
- ネット界隈で熱狂的な支持を集める「小川晶候補」
- 現場で支持者を集め始めた「丸山彬候補」
という構図だ。
選挙は「声の大きさ」ではなく、「足の運び」で決まる。前橋市長選の結末は、どちらの候補が、より多くの人を実際に投票所へ連れて行けるか――その一点に集約されている。明日12日、前橋市の未来をかけた戦いの結果が出る。


