――無党派・若年層の動きが勝敗を決める構図に
前橋市長選(1月12日投開票)の情勢が、ここにきて大きく動いている。
これまで「小川晶・前市長が接戦の末に再選するのでは」とみられていた構図が、JINS創業者・田中仁氏の丸山彬候補支持表明を境に、明確に「丸山優勢」へとシフトし始めた。
今回の選挙は、単なるスキャンダル選挙でも、保守対革新の争いでもない。
「誰が前橋の未来をつくるのか」という都市の方向性をめぐる選択に変わりつつある。
選挙は「方程式」――マイナスがプラスに転じる構造
選挙は感情ではなく、しばしば「方程式」で動く。
候補者に(-)の要素があっても、それが別の(-)と掛け合わされれば、結果的に(+)になることがある。
小川晶前市長は、いわゆる「ラブホテル問題」で辞職に追い込まれた人物だ。
普通なら致命傷になりかねないスキャンダルだが、山本一太群馬県知事がブログなどで激しく小川氏を批判し続けたことで、状況は逆に複雑化した。
山本知事は発信力が高く、県政の手腕を評価する声も多い一方で、強い自己主張と露出の多さゆえ、アンチ層も厚い政治家だ。
その知事が小川氏を叩けば叩くほど、「知事に反発する層」が小川側に吸い寄せられるという構造が生まれる。小川陣営側の「知事の『直滑降ブログ』が追い風になっている」という声を紹介する週刊誌報道もあった。
実際、知事が強く関与した他の地方選挙では、推した候補が敗れるケースも続いてきた。こうしたこともあり、当初は「小川再選」の可能性が現実的に見えていた。
スキャンダルの“風化”と「相対評価」
小川氏のスキャンダルも、選挙が進むにつれて奇妙な“風化”を起こしていた。弁護士でもある小川氏が一貫して「何もなかった」と否定し続けることで、
「弁護士なんだから、さすがにそんな愚かなことはしないのでは」
「もしかしたら本当に白なのでは」
という疑念の反転が、一定の有権者心理の中で生じ始めていたのも事実だ。
さらに、有権者は絶対的な善悪ではなく、相対評価で投票行動するケースが少なくない。
ガーシー氏や兵庫県の斎藤知事など、問題を抱えたまま再選された例が続く中で、「それに比べれば、まだマシではないか」という空気が広がる余地もあった。
この流れのままなら、小川氏は「批判されながらも逃げ切る」ルートに乗っていた。
そこに現れた“絶対値の大きい”――田中仁という存在
この構図を一変させたのが、JINS創業者・田中仁氏の参戦だ。
田中氏は単なる経営者ではない。
前橋の再開発、めぶくプロジェクト、白井屋ホテルの再建、糸井重里氏との前橋の街づくりなど、私財と人脈を投じて前橋を変えてきた経営者であり、市民からの知名度や信頼の「絶対値」が極めて大きい人物だ。
その田中氏が、無名に近かった丸山彬候補を支持すると表明した。


これは選挙の方程式で言えば、
丸山氏(ほぼゼロ)+ 田中仁氏(巨大なプラス)
という計算になる。
実際、丸山陣営の集会には1500人規模が集まり、「無風」と言われていた候補が一気に“本命”に浮上した。
無党派層と都市型有権者が動き始めた
田中氏の支持表明が決定的に効いているのは、無党派層と都市型有権者だ。
前橋は近年、起業家やクリエイター、移住者など、新しい層が増えている。この人たちは、政党や旧来の利害関係ではなく、
- 誰が街を面白くするか
- 誰が未来志向か
で投票する。
その層にとって、田中仁=「前橋を実際に変えてきた人」というイメージは圧倒的だ。
丸山氏はその“象徴”を背負うことに成功した。
「賞状問題」が18歳有権者を直撃
もう一つ見逃せないのが、「子どもたちが小川晶の名前入り賞状を受け取りたくない」という報道だ。
これは一見、小さな話に見える。しかし、18歳の新有権者層にとっては極めて象徴的な問題だ。
初めて投票する若者にとって、「この人の名前が入った賞状を、誇りに思えるか?」という感覚は、想像以上に重要だ。親世代も含め、「子どもに説明できない市長」というイメージは、強烈なマイナスになる。
若年層の投票率自体は高齢層より低いが、今回のようなスキャンダル絡みの選挙では、感情の振れ幅がそのまま投票行動に出やすい。
投票率が上がるほど、丸山有利
今回の最大のポイントはここだ。
- 投票率が低ければ → 組織票と固定層が強い小川有利
- 投票率が上がれば → 無党派・若年層が増え、丸山有利
連日の報道で選挙への関心は明らかに拡大している。前回40%を切った投票率も筆者は45%程度まで盛り返すのではないかと予測している。
流れは「丸山優勢」に転換した
田中仁氏の登場で選挙の情勢は大きく変わった。小川優勢 → 丸山優勢へと、はっきりとトレンドが切り替わったとみていいだろう。
前橋市長選は今、単なるスキャンダル選挙から、「前橋の未来を誰に託すか」という都市選択の選挙へと変貌した。
正月明けていきなりの全国的な注目を集める選挙。「アキラ対決」の結末はいかに。市民でない自分には投票権はないが、その結果を注視していきたい。


