フジはJJとコラボ キー局のアナウンサー採用サイトをのぞいてみた 

フジがつくりだした〝女子アナ〟ブーム

 どこのキー局も女性のアナウンサーを「女子アナ」として商品化し、自局内タレントのような扱いで売り出している。この風潮は1980年代に端を発し、令和の現在も続いている。そして、そのきっかけを作ったのはフジテレビである。数多くのヒット作やブームを作ってきた同局だが、「女子アナ」というコンテンツはフジが作り出した最大のコンテンツと言っても過言ではないだろう。

 テレビ神奈川出身のフリーアナウンサーで甲南女子大学で講師をつとめる原良枝氏は「『女子アナ』という職業」というレポートの中で、

「女子アナ」は、「1980 年代以降、数々の人気バラエティー番組を世に送り出し、それ以降のテレビのあり方を方向づけた(とされる)フジテレビ」で誕生したと言われている。
(中略)
「楽しくなければテレビじゃない」のコピー通りの番組を提供し、フジテレビは破竹の勢いで民放の雄といわれるまでになった。このような企業の事情の流れの中で、「女子アナ」は誕生した。

 と述べている。

 テレビの視聴者も女子アナをタレントのように消費し、テレビ局もアナウンス技術よりもキャラクターを重視した売り出し方をしてきた。ある意味、需要と供給のバランスが取れていたといえる。

 原良枝氏は同レポートの中で、「仕事の領域が拡大した『女子アナ』は、タレントや芸人のようにフリートークをこなし、タレントアイドル化していった。『女子アナ』のタレント化と連動するように、タレントや芸人がアナウンサーの仕事領域へ進出し、アナウンサーとタレントのボーダレス化に拍車がかかった」と指摘しているが、実際、テレビ朝日の斎藤ちはるアナや日本テレビの市來玲奈アナのようにアイドルグループからアナウンサーに就職する流れも生まれている。

フジテレビはブスはとりません

 フジテレビが女性のアナウンサーを「タレント」として採用していたというのはほぼ間違いないだろう。
 元・週刊現代の名編集長である元木昌彦氏は自らが受け持っていた「編集学」という講座で招いた露木茂氏(元フジテレビアナウンス室専任局長)が「フジテレビはブスは採りません」と大学生の前で言い放った日刊ゲンダイデジタルで暴露していたが、アナウンス技術うんぬんよりもタレント性のあるかわいい子を採用したいというのは露木氏個人の考えというより、フジテレビとしての採用方針だといっても過言ではないだろう。

 企業の採用サイトを見れば、その会社がどのような方針で社員採用を行っているかを垣間見ることができる。キー局の採用サイトには「社員紹介」のページがあるが、ここでどのような社員が登場しているかというのは局のカラーが出る。
 フジの場合、社員インタビューでさまざまな職種が紹介されているが、アナウンサーだけが、JJ(光文社)の外部サイトにリンクする。この社員インタビューに男性アナウンサーはいない。リンクをクリックすると、さながらモデルのインタビューのような透明感のある写真や洒落たレイアウトで構成された記事が出てくる。2025年2月時点

 JJはフジテレビ女子アナのカレンダー制作も請け負っており、JJとフジテレビの関係も気にはなるところではある。
 念のためと他局の採用サイトもチェックしたが、採用サイトの中でアナウンサーが外部の出版社とコラボした出し方をしているのはフジのみだった。

キー局の採用サイトを調べてみた

では、フジテレビ以外のキー局の採用サイト内の社員紹介はどんな感じなのだろうか。本来、実際のサイトを見せたいところではあるが、肖像権の関係もあるため、リンクでの紹介になっている。すべて2025年2月時点の情報だ。
日本テレビ

社員紹介のページでアナウンス部はMCの水卜麻美アナ(2010年入社)、報道キャスターの鈴江奈々アナ(2003年入社)、実況の田中毅アナ(2002年入社)、ナレーションの徳島えりかアナ(2011年入社)の4人が登場する。アナウンス部内でもMC、報道、実況、ナレーションという仕事内容のバランスを考えた構成。女性:男性=3:1でやや女性に偏りはあるが、入社年次のバランスにも配慮していることがうかがえる。2025年2月時点

TBS

TBSは田村真子アナ(2018年入社)、高柳光希アナ(2021年入社)、日比麻音子アナ(2016年入社)、井上貴博アナ(2007年入社)の4人が紹介されている。年齢バランス男女比に配慮した人選といえる。2025年2月時点

テレビ朝日

テレ朝はベテランの小松靖アナ、寺川俊平アナ、弘中綾香アナの3人が紹介されている。男女比=2:1の構成。なぜ4人にしなかったのかは謎だが、男性のアナウンサーを採用したい現れなのだろうか。女性のアナウンサーは弘中アナのようなアナウンス技術よりもタレント性の高いアナウンサーを求めている現れなのかは分からない。2025年2月時点

弘中アナについては「アメトーク」で知られる加地倫三氏が面接官だったそうだが、「アナウンサースキルはひどかったけど、当時はね。声もよくないし、滑舌も。でも、フリートークは、図抜けてすごかった。面白かった」とラジオ番組で明かしている。当の弘中アナももともと裏方志望で、アナウンサーの採用は時期が早いから練習のつもりで受けたとか。

テレビ東京

テレ東は相内優香アナ、中垣正太郎アナ、田中瞳アナの3人が紹介。男女比=1:2と女性に偏っている。テレ東は2000年以前はアナウンサーを一般職で採用していた歴史を持っているが、近年は森香澄アナ(元テレ東)のようにタレント性のある女子アナの採用が目立っている。2025年2月時点

もちろん、JJサイトにリンクしていることをもって、フジだけが女性のアナウンサーを「タレント」のように採用していたと断定することはできない。他のテレビ局も似たり寄ったりの部分はあるはずだ。ただ、フジテレビはその色が際立っているというのは確かだろう。チノパン、アヤパン、カトパンといった、謎の推し「パン」文化があったのもフジだけだ。

やはり女子アナは接待要員なのか?

 1日の報道特集(TBS)では、民放アナウンサーのこんな声を紹介している。

プロデューサーに「一流アスリートを囲む飲み会があるから、アナウンサーで囲んでほしい」とお願いされ、局アナ3人で参加した。キャバ嬢並みの接待を期待され、それに応えられない自分はみじめになり途中退席したが、翌日、プロデューサーに怒鳴られ、ショックを受けた。(スポーツ報知)

 この民放局はどこの局か分からないが、女子アナがキャラや見た目で評価され、接待要員として、タレントとして消費されてきたことがよく分かる証言だ。
 
 と、ここまで書いてずっと気になってきたことがある。2008年に自殺した元TBSアナウンサーの川田亜子さんの件だ。彼女は「母の日に私は悪魔になってしまいました。産んでくれた母に生きている意味を聞いてしまいました。母の涙が、私の涙が止まりませんでした」とブログに書き残し練炭自殺をしてしまった。

 今回の中居ーフジテレビ騒動を見ていて、なぜか、この川田さんの言葉が頭をよぎった。エンタメ界の闇の奥底に巣食う悪魔がいるとするならば、これを機に一気に膿は出し切ってほしいと願うばかりだ。
 

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